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独自の発電池システムで「環境保全のサイクル」を回す。BCP対策やSDGsへも貢献するRebglo.が目指す社会

企業や病院、介護施設や自治体などが自然災害に遭遇した際に、事業の継続および早期復旧を可能とするための計画「BCP」。日本においては、2011年の東⽇本⼤震災をきっかけに、特にその重要性が認識されるようになりました。事業継続の観点から、また企業が社会的責任を果たすためにも災害時の電源確保は非常に重要度の高いファクターであり、こうした停電対策は必要に迫られています。

企業や事業者へ向け、国や自治体からのBCP対策推進が強まる
平成20年7月、環境省はいち早く「環境省業務継続計画」を策定。その後、企業や事業者などへは、厚生労働省が介護施設に対して2024年以降のBCP策定を義務付けたり、小池百合子都知事が経済団体に対してテレワークを含むBCPの再点検を要請したりと、対応が強く推奨されている。

環境省業務継続計画(令和3年11月に発表された一部修正版)」(環境省)
令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(厚生労働省)
BCP(事業継続計画)の再点検等について(要請)」(経団連宛て 東京都)

そのようなBCPバッテリーや発電池システムといった非常用電源を展開している株式会社Rebglo.(リブグロ)は、資源を循環させることでさまざまな社会課題の解決を目指す、環境エネルギーベンチャー企業。国産EV(電気自動車)で使用されたバッテリーをリフレッシュし、再活用することで、環境負荷のかからない発電池システムを開発しています。今回は、日本のBCP対策の現状やRebglo.の事業内容と理念、社会課題との関係性について代表の村越誠(むらこし・まこと)に話を聞きました。


「やらなすぎ」か「やりすぎ」に偏りがちな日本のBCP対策

「災害大国」として知られる日本。最近だと、静岡県で起きた大雨による大規模停電や九州北部豪雨などの被害が記憶に新しいのではないでしょうか。このような災害への備えとして昨今、企業や自治体におけるBCP対策の重要性が叫ばれています。

BCPとは
「Business Continuity Plan(事業継続計画)」の略。⾃然災害や感染症あるいはテロなどが原因で緊急事態に陥った場合に、事業資産への損害を最⼩限にとどめ、主幹ビジネスを継続しつつ早期に復旧できるようにするための計画

このようなBCP対策の普及と啓蒙を、事業の一環として展開しているのがRebglo.です。

── 村越さんは日本のBCP対策の現状をどのように見ていますか?

村越「日本は地震や大雨などによる災害が非常に多く、それが原因で事業が止まってしまうケースが多々あります。また、実は大都市圏を除いたほとんどが電力脆弱地域でもあるんです。例年報道されている中国の大洪水のように何十万、何百万規模の被災者が……とまではいかないことが多いですが、ある1カ所で地滑りが起き、送電線が落ちただけで地域一帯に影響が出て、さらに復旧に何日もかかるみたいなところは日本でも数多くあるんです。

にもかかわらず、こうした事態への備えや対策はいまだ不十分と言えます。この点に対する問題意識は強くありますね。もちろん、なかにはBCP対策に意欲的に取り組んでいる企業や事業者もいますが、日本のBCP対策の傾向は極端で、『やらなすぎ』か『やりすぎ』のどちらかに偏ることが多いんです」

Rebglo.(リブグロ) 代表取締役 村越誠
Rebglo. 代表取締役 村越誠

── なぜ「やらなすぎ」と「やりすぎ」に偏ってしまうのでしょうか?

村越「まず『やらなすぎ』になるのは、実際に災害に見舞われて停電してみないと、何が必要なのかが意外とわからないからだと思います。たとえば停電するとトイレが止まってしまうケースがありますが、普段の生活の中で、なかなかそこまで想像することは難しい。一方、過去の経験や勘を頼りに、非常用電源を想定されるリスク以上に備えてしまうなどするのが『やりすぎ』です。こうした問題は企業をはじめ、自治体などでも多く発生しているのではないでしょうか。

我々はこのような問題への一手として、防災プロセス工学を専門とする東京大学生産技術研究所の沼田研究室とタッグを組み、災害時の電源確保に関する定量的な指標をつくるための共同研究を行っています。事業体ごとにどの程度の蓄えがあれば適切なのか、災害時の電源確保に必要なレベルを定義するための研究を通じて、実効性と有効性を兼ね備えた基準を提案する予定です。

BCP対策は、世の中的にもまだ認知が不十分なのが現実です。こうした分野に踏み込んでビジネスを展開している企業はまだ数も少ないと思うので、我々は防災エネルギー業界を牽引するパイオニアとして、啓蒙活動なども含めたBCP対策普及の足掛かりになれればと考えています」

廃棄物だったものから新たな価値が生まれる、そこにおもしろさを感じた

村越がエネルギー事業に携わるようになった最初のきっかけ。それは地元の石油会社に入社したことに始まると言います。入社後すぐに石油タンクの管理部署に配属され、原油からガソリンやアスファルトなどをつくる一連の過程とその全体像を学んだ後、生産設備に関わるプラント部門に配属されて電力について学ぶなど、貪欲にエネルギー分野への知識を吸収していきました。

── 最初に入社した会社では具体的にどのようなことを学んだのでしょうか?

村越「一言で言うと、『エネルギーの循環』ですね。たとえば原油を抽出する際、一般的には何の原料にもならない産業廃棄物が出てしまいます。しかし、これをボイラーで蒸気化させ、その蒸気でタービンを回すと電気が発生する『廃棄物発電』ができるんです。『ゴミだったものが、別の角度から見ると価値のあるものになる』ことにすごくおもしろさを感じたと同時に、『エネルギーって循環してるんだな』とあらためて気付くきっかけにもなりました。

この考えが、Rebglo.=『Reboot Globalization』という事業コンセプトにつながっています。つまり、モノの価値を再び見出すことで、環境推進とエネルギー推進という、一見すると相反するものを両立できるのではないかと考えたんです」

村越「当時から、エネルギー市場は今後著しく成長するだろうという予感はあったので、その中で自分にできることは何かを毎日考えていました。そうして自分なりに勉強するうちに蓄電池の存在に行き当たり、『これだ!』と思ったんです。蓄電池業界は幅が広く、環境的な影響も比較的大きいですから。次第に『これからは電気をつくるより貯める時代なのかもしれないな』と考えるようにもなりました」

70%もの蓄電可能容量が残るEVバッテリーを有効活用する

一般的に人間が水などを飲まずに過ごせる限界が72時間とも言われますが、BCP対策の目安としても掲げられているのが「停電時72時間の電源確保」。そのために、災害時の電源供給元となる非常用電源装置の存在は欠かせません。Rebglo.が展開する発電池システムは、ガス発電機と蓄電池の要素を組み合わせた非常用電源でEVのバッテリーをリユースしているという大きな特長があります。

屋外に設置されたRebglo.の発電池システム。耐水性・耐塵性にも優れ、風水害にも強いため、建設現場でも活躍する
屋外に設置されたRebglo.の発電池システム。耐水性・耐塵性にも優れ、風水害にも強いため、建設現場でも活躍する

── 蓄電池業界に足を踏み入れた後、EVバッテリーに着目したきっかけはなんだったのでしょうか?

村越「蓄電池に興味を持ち始めた頃、とあるきっかけで大学で電池の研究をしている先生と引き合わせていただき、電池の素材や種類についていろいろと教えてもらったんです。その中に『マンガン系リチウムイオン』という、容量が大きくて安全な、しかし重くて場所を取る電池があり、この電池がEVに搭載されていることを知りました。

そしてそれと同時に、EVに搭載されたのち使用済となったバッテリーモジュールが大量に余っている事実も知りました。日本のとある自動車メーカーは、安全性や実用性の観点から、蓄電可能容量が70%を切ったEVバッテリーをディーラー経由で回収し、新しいものに交換しています。逆に考えると、これは70%もの蓄電可能容量のあるバッテリーが活用されずに大量に放置されているということであり、非常にもったいないなと感じました。そのようなEVバッテリーを再生する研究を行っているキーパーソンとして紹介してもらったのが、現在、Rebglo.のバッテリーアドバイザーを務めている加東重明でした」

かつてEVで使用されていたバッテリーを独自技術で再生。発電池システムの中に組み込む
かつてEVで使用されていたバッテリーを独自技術で再生。発電池システムの中に組み込む

村越「加東は自動車業界でEVバッテリーの企画立案や生産・品質管理を長年担当したベテランの技術者で、バッテリーの種類や運用方法についての豊富なノウハウを持っていました。そこで、加東のもつ技術と私の事業コンセプトで一緒に何かやれないかと話し合ったところ、意気投合して今のRebglo.が誕生しました。

我々の現在の主な事業を一言で説明するなら『EVを卒業してリサイクルできずに放置されたバッテリーを、自分たちの技術でリフレッシュ&デザインしてリユースすること』と言えるでしょう」

EVで使用されたバッテリーをリユースし、徹底的な改良を重ねて完成したBCPバッテリーモジュール製品「ミルミルワーカー(アウトドアタイプ)」
EVで使用されたバッテリーをリユースし、徹底的な改良を重ねて完成したBCPバッテリーモジュール製品「ミルミルワーカー(アウトドアタイプ)」

SDGsの目標7・13にも貢献するEVバッテリーのリユース。目的は電池を売ることではなく、大きな環境保全のサイクルを回すこと

「Rebglo.の事業は、決して電池を売ることではない」 そのように村越は言います。災害用蓄電池の一部として使用済みのEVバッテリーに新たな価値を見出したRebglo.は、事業を通じて環境や社会により良い影響をもたらしたり、SDGs文脈との高い親和性を生み出したりもしています。

SDGsの目標7・13にも貢献するEVバッテリーのリユース。目的は電池を売ることではなく、大きな環境保全のサイクルを回すこと

── EVバッテリーのリユースは、SDGs的にも注目されるものかと思います。

村越「そうですね、SDGsのど真ん中だと思っています。昨今EVは環境に配慮したプロダクトとして注目されていますが、どうしても最終的に大量の電池がゴミとして残ってしまうという負の側面もあります。そして、現在の技術では使用済みバッテリーの画期的なリサイクル手段がなく、重大な環境問題にもつながっている。そこで、電池の寿命をできる限り延ばしてより長く使えるようにすることが、喫緊の環境問題に対するもっとも効果的な手法だと考えました。

我々の事業は電池から始まっていますが、目的は電池を売ることではなく、大きな環境保全のサイクルを回していくことなんです。これはSDGsの目標7『エネルギーをみんなに、そしてクリーンに』にも一致します。

また、SDGsの目標13『気候変動に具体的な対策を』にも該当します。電池の製造工程には、単にCO2を出すか出さないかという点以外にも、材料発掘時の土壌汚染や海水汚染といったさまざまな環境問題や、児童労働などの社会問題が潜んでいます。その点、電池の寿命を延ばすことは、こうした課題の解決にもつながっていると認識しています」

左:建設会社との太陽光パネル連携訓練。右:事務所でのBCP用途バックアップ電源
左:建設会社との太陽光パネル連携訓練。右:事務所でのBCP用途バックアップ電源

── 持続可能な社会に向け、世界でもEVバッテリーのリユースは進んでいるのでしょうか? 

村越「実は、この事業は日本だからこそ成立するとも言えます。というのも、蓄電可能容量70%が EVバッテリーの回収基準となっている国はあまりないんです。再生可能エネルギーを推進しているドイツでもそのような厳しい基準には至っていない。日本の安全基準の高さがここから伺えます。

EVは、万が一でも車が動かなくなってはいけないと、車体メーカーさんと国が安全性に関する規制をいろいろ設けています。縛りが多いことは、それだけ乗る人にとっては安全だと言えますが、その裏返しとして、先ほども述べたようなEVバッテリーのリユース面における日本独自の課題が生まれているとも言えるでしょう。

また、こうした特殊な電池の運用方法についての知見・ノウハウを深めるには時間がかかるため、これから他の事業者が新たに着手するにもハードルの高さがあると思います。だからこそ、我々はビジネスの展開スピードをより早め、多くのプレイヤーを巻き込むことで事業のレバレッジを効かせていきたい。そうすることで、持続可能な社会の実現にも貢献していきたいと考えています」

環境エネルギーベンチャー企業 Rebglo.

「活用されていない資源に再び命を吹き込み、環境保全のサイクルを回す」ことこそがRebglo.の事業の目的。この大義名分を果たすことが、結果として電力分野におけるBCP対策やSDGsへの貢献へとつながっていくのです。

取材・執筆・編集:Rebglo.編集部
撮影:山野一真


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