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省エネ診断員に聞く、法人の電気代を削減する方法3選&省エネ事例。月2.5万円の節電は売上1,500万円相当!?

コロナ禍からの景気回復を皮切りに、燃油価格の高騰や国内の電力供給不足、再エネ賦課金の上昇など、さまざまな要因が積み重なり、電気代の値上がりに拍車がかかっています。一般家庭においてはもちろん、オフィスを構えている法人に対しても大きな打撃を与えています。電気代を少しでも下げたいと思い、社内で節電や省エネを呼びかけても目立った成果が出ない、とお悩みの経営者も多いとよく耳にします。

今回は、電気代を削減したい法人向けに電気代が上がる要因や省エネ方法、他社事例などを紹介していきます。オフィスの節電や省エネに注力したい経営者の方にもオススメですよ。

固定価格買取制度導入後の賦課金ふかきんの推移


出典:固定価格買取制度:再エネで発電した電気を、電力会社が固定価格で一定期間買い取る制度。このため再エネの買取費用は、電力会社が利用者から賦課金という形で回収している

2012年の固定価格買取制度の導入以降、再エネの設備容量は急速に伸びています。一方、買取費用は3.8兆円に達し、一般的な家庭での平均モデル負担額(月260kWh)で賦課金負担は873円/月にのぼっています。再エネの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図るべく、コスト効率的な導入拡大を進めています。

経済産業省 資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」」

オフィスの電気代を上げている2大要因は「空調設備」と「照明」。意外と知らない、法人の電気代算出ロジック

社内の節電ルールがおろそかだったり、一時的でも社員の使い方が間違っていたりすると電気代はすぐに上がってしまいます。つまり、「社員の間違った電気の使い方」 × 「空調設備」 or 「照明」という図式が電気代の肥大化につながっていることが多いんです。

特に夏・冬は空調の使用電力が多く、建物の半分以上の電気代を占めることも……。よく目にしがちな社内ルールは、「エアコンの温度は28℃に設定しよう!」。これでは、社員からの反感も買い、生産性も下がってしまいます。

よくある節電対策「お昼の12〜13時は部屋のエアコンと照明を消そう」は、電気代を爆上げするトリガーに!?

ケータイ料金と同様に、電気代も基本料金と使用料金に分かれています。家庭の電気代は固定の基本料金と料金を元に算出されますが、法人の基本料金は30分単位で計測されており、使用電力量の最大値を基準に1年間の基本料金が設定されます。

例えば、よく見る失敗でいうと「お昼の12〜13時は部屋の照明とエアコンを消そう」といった社内ルール。真冬の1日にこれをやってしまうと、広々としたオフィスを一気に暖めることで大量の電気を要するため、電気代が跳ね上がる要因になってしまいます。

電気代高騰の種=燃料費調整額とFIT価格
燃料費調整額とは電気料金の算出方法の一つで、ガスや原油などの石油燃料の価格変動に影響を受ける調整額のこと。2010年から2019年までの間に、産業用の電気料金が約25%も上昇しました。また、FIT(固定価格買取制度)は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで作られた電気を電力会社が固定価格で買い取る制度を指します。FIT価格は電力利用者の電気代に上乗せされるため、FIT価格が上がると家庭やオフィスで使用する電気代が実質的に値上げされます。

資源エネルギー庁 FIT法改正で私たちの生活はどうなる?

月2.5万円の節電=売上1,500万円相当!? 省エネ診断員に聞く「今すぐできる省エネ方法3選」

「省エネはケチケチ活動」と感じる人もいるようですが、経済産業省に属する資源エネルギー庁曰く、省エネで浮いたお金は「純利益」とのこと。例えば、月に2.5万円節電すると年間の節約額は30万円になり、これを平均的な中小企業の利益率で換算すると、1,500万円相当の売上と同じ効果になります。オフィス環境を管理している総務部などのバックオフィスの部署も、視点を変えると利益を生み出す部門になってくるんです。

出展:資源エネルギー庁「儲けにつながる省エネ術」

ここで、Rebglo.の省エネ診断員 中馬(ちゅうまん)に、今すぐ実践できる省エネ方法を教えてもらいました。

経済産業省が認定する省エネ診断員とは
事業者や消費者が運用するエネルギー使用設備に対して、運転の状況や詳細検討、ヒヤリング調査を行い、そのうえで具体的な省エネ対策を立案する資格の保有者

省エネ方法① ホット用ペットボトルで即席湯たんぽ(冬場)

中馬「朝出社して給湯機でコーヒーやお茶などを飲む際に、余ったお湯があれば、それをホット用のペットボトルに注ぐと即席の湯たんぽになります。ただし、高温すぎるお湯を入れると熱くなるので、注意が必要です。また、ペットボトルと近い熱伝導率を持つアルミボトルでの代用もオススメです」

省エネ方法② 少し不格好だけど… 窓に○○を貼る(通年)

中馬「室外から室内への熱の移動の割合は、屋根が10%、窓が70%程度です。外からの冷気を遮断するために、プチプチ(気泡緩衝材)を窓に貼ったり、断熱フィルタやグリーンカーテン、二重サッシを設置したりするとオフィスの温度が一定に保たれやすくなりますよ。見た目を気にされる方は、来客用の会議室などでは要注意です」

省エネ方法③ 冷房を2度上げて扇風機をつける(夏場)

中馬「冷房なら設定温度を1度上げるだけで約10%の省エネになります。さらに、冷房を2度上げて扇風機をつけると、体感温度はほぼ同じで約15%もの省エネになりますよ」

他にもまだまだ、すぐできるカンタン省エネ方法

  • フィルターの掃除:フィルターにホコリが溜まると空気の循環効率が低下するため

  • 始業時間・就業時間の変更:室内と室外の気温差が大きいほど空調の設定を強くする必要があるため

  • ディスプレーの明るさ調整:消費電力を軽減できる上に、社員の眼精疲労を軽減することも可能

  • 就業後にコンセントを抜く:コンセント接続時に電気代の約6%を占める待機電力が消費されているため

難易度はグッと上がりますが、こんな省エネ方法もあります。

レベル高の省エネ方法① LED照明を導入する

LED照明は従来の白熱電球と比べて明るさは約20倍、電気代は8分の1以下と言われています。また、白熱電球の寿命が3~6ヶ月なのに比べて、LED照明の場合は10年以上持つことも珍しくありません。本体価格だけみると白熱電球の方が安いのですが、長い目でみると圧倒的にLED照明の方がおトク。理論上は、約9ヶ月で元が取れる計算になります。

引用:経済産業省 資源エネルギー庁

レベル高の省エネ方法② 補助金などの金融支援を受ける

中小企業や小規模事業主が自家発電システムを取り入れた場合、補助金などの金融支援を受けられる可能性があります。例えば、国策で推進されているSDGsやカーボンニュートラルへの貢献にもなる省エネ補助金(先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金)。補助金は全国で約7,000件と種類が多いことに加えて、地方によって補助対象の内容や補助割合も異なるため、念入りに調べてみてください。(参照:省エネ・節電・CO2削減に関する支援(補助金・助成金)

レベル高の省エネ方法③ 蓄電池を導入する

蓄電池(電力を貯めて使用したいときに出力可能な機器のこと)を使用すれば、オフピーク時(ピーク時ではない閑散時)に発電した余剰電力を蓄電し、ピーク時に使用することで電気代を削減することができます。

また、蓄電池をうまく活用することで、電力代のピークカット(電力使用量が最も多い時間帯に電力使用量をカットすること)や停電時のバックアップなど、さまざまな使い方も可能。一般家庭での利用が多い蓄電池ですが、電力コスト削減のために企業での導入が進んでいます。予期せぬ災害時に電力会社からの電力が途絶えても、蓄電池に貯めておいた電力を使用できるので、BCP対策にもつながります。

省エネは地球にも優しい。SDGs目標7・13への貢献
深刻化している地球の気候変動問題の改善を目指した、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラル。電力会社から送電される電力は化石燃料を使用して作られた電力がメインなので、大量のCO2が発生します。省エネを促進すると、SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、目標13「気候変動に具体的な対策を」への貢献にもなるかもしれません。

高性能・長寿命、圧倒的にエコなバッテリー「リブグロBCPバッテリー」

Rebglo.が提供する「リブグロBCPバッテリー」は、発電機と蓄電池の両機能を兼ね備えた「電気を溜めながら使う」ことのできるシステムを搭載。電力のピークカット・ピークシフトが可能となる経済性も併せ持つことに加え、長期レンタルでの導入ができることからお財布にも優しいバッテリーです。

某コンビニ、ホテル… 法人の電気代削減事例2選

ローソンの削減事例

全国に展開しているコンビニエンスストアのローソンでは、電気のLED化や太陽光の導入により、大幅な電力削減を実現しました。今後さらなる省エネを目指し、以下のような取り組みを行っています。

ローソンでは、脱炭素社会の実現に向けて、環境ビジョン「Lawson Blue Challenge 2050!」を策定し、1店舗当たりのCO2排出量を2013年対比で2030年に50%削減、2050年には100%削減することを目指しています。 今回オープンする店舗は、この取り組みの一環として設計されました。今後は同様の店舗を他の地域にも出店し、2024年2月まで検証を行ったうえで、2024年3月以降の新店標準化を目指します。また、既存店についても、同じく2024年度以降の改装時に店内設備の導入を目指してまいります。 

2013年度対比で電気使用量を40%削減|ローソン公式サイト

ケン・プレミア札幌マネジメントの削減事例

シティホテルにおける節電を目的に、デマンド監視装置の設置や照明のLED化を行い、継続的な省エネに成功しています。新型コロナウイルス流行による売上減の向かい風の中、節電によるコストダウンは大きな支えになったのではないでしょうか。

最も効果が大きな運用改善である外気導入量の調整については、診断以前は外気導入ダンパは全て全開でCO2濃度も低い状態でしたが、室内の CO2 濃度を見ながらダンパの調整を実施しました。デマンド監視装置の活用については、真夏・真冬の監視装置の設定を見直し、デマンド監視体制を厳格化しました。マニュアルを変更し、警報が出た際の対応を明確にし、お客様に影響の出ない範囲での節電を実施しました。その結果、2015 年から徐々にデマンド低減に努めてきましたが、診断後更に 15kW 上積みし、計 100kW 以上の契約電力低減に成功しています。

省エネルギーセンター 省エネ事例集

経営改善につながる省エネ事例集(一般財団法人省エネルギーセンター)も参考にしてみてください。

一人でできることは小さい。電気代の削減で最も大切なのは「社員の協力」

本記事で紹介した電気代を削減する方法は、あくまでも手法に過ぎません省エネで不可欠なのは「周囲の協力、つまり社員の理解と行動」。正しい知識と行動を強要するだけでなく、なぜ省エネが必要なのか、その重要性を社員に共有して、納得してもらうことが非常に重要です。

例えば、電力会社の基本料金を抑えれば年間の電気代が安くなり、結果として会社の利益が増加し、社員の給料やボーナスに還元されることを周知させるやり方もあります。

ですが、法人の理念や社風、規模感などによって多種多様に異なるため、会社の財布を自分の財布と考えてもらえるように社員の方と対話してみてはいかがでしょうか。

監修:省エネ診断員 中馬慶太(Rebglo.)
執筆:売野友亮
編集:Number X


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