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「浮いたお金は利益に転換」省エネ診断士とは? 診断メリットやコスト削減事例集を解説

現在、中東紛争やウクライナ戦争など対外的な要因、さらに円安・物価高騰など様々な要因でいわゆるエネルギー費に関して見直しが急務となっています。家庭レベルでの見直しはもちろん、企業レベルでも見直しが必要な中、その手助けをしてくれる存在が「省エネ診断士」です。資格を有する省エネ診断士に実際に診断してもらうことで、エネルギー費に関する補助金の導入なども容易になります。

省エネ診断士/中小企業診断士 佐藤久美子(さとう・くみこ)
北九州市出身。テーマパークダンサー、金融業の営業を経て、省エネ診断員を取得しました。現在は経営コンサルタントとして、経営改善、設備導入、事業計画書や、補助金・給付金に関する情報提供、アドバイスを行っています。


「売上増だけではなく、コスト削減も提案したい」証券会社の営業から省エネ診断士になったきっかけ

もともと佐藤さんは証券会社の営業をされていました。証券会社の営業として、金融商品を売り込むだけじゃない「何か」を探していたタイミングで、省エネ診断士の資格を持っている方と知り合いました。そこで売上を上げるだけではないコスト削減を提案できる省エネ診断士の仕事に興味を持ったのがきっかけで、省エネ診断講座を受講し合格しました。

佐藤さんは現在 省エネ診断士の仕事をメインに活動されており、さらにその後中小診断士の資格も取得されるなど、中小企業を中心に経営に寄り添う活動をされています。

省エネ系の資格を取る社団法人がいくつかある
佐藤さん自身は北九州市で「一般社団法人エネルギーマネジメント協会」が主催する「省エネ診断講座」を受けて合格したため、いま省エネ診断士としてお仕事をされています。佐藤さんが主に活動されている九州では、福岡県が省エネ診断を無料で行っており、中小企業や個人事業主向けに省エネ診断を行います。

佐藤「省エネ診断士は業種という側面もあると思うんですが、男性が多い資格です。企業の省エネ診断士は50代、60代の方が多いので、なかなか私ぐらいの年齢の女性で、しかもメーカー勤務でなく、 独立してやってる方は、かなり少ないと思います。またいろいろな補助金の相談を受けるなかで、今度は省エネとは違う切り口の専門知識が必要だと感じて中小企業診断士の資格も取得しました」

省エネ診断士ってどんな仕事? 診断フローも紹介

現在、温室効果ガスの削減や東日本大震災以降、企業は省エネルギーへの更なる取り組みを求められるようになりました。省エネ診断士は、工場や事務所等のエネルギーがどのように使われているかの使用状況を確認し、削減可能な項目のアドバイスを行い、事業者と伴奏して省エネルギーに取り組んでいます。

また国の事業で省エネプラットフォーム事業があります。この事業では「省エネお助け隊」(全国の省エネ支援事業者が地域の専門家と強力して作る省エネ支援団体)が企業の省エネに対する悩み相談や、実際現地に伺ってどういう機器があるか診断して、一緒に企業の省エネに取り組まれています。「省エネお助け隊」を利用すると、省エネに関する伴走支援(コンサルティング)を国が9割支援可能で、補助金申請も手伝えます。

「必ず成果につながることがやりがい」 STEP別の省エネ診断フロー

STEP1. 事前分析
直近12か月分(可能であれば3年分)のエネルギー(電気、ガス、水道、重油など)の使用量、使用料金のわかる請求書などから、使用状況の把握をします。

STEP2. 現地診断
現地(工場・事務所・施設等)に設置された機器(照明・空調機・ボイラー・冷凍冷蔵庫)を確認、施設担当者の方に使用状況等をヒアリング。現地での診断は1回で、平均すると診断時間は2時間程度になります。現地診断の際は従業員に「ここは使いにくくないですか?」など、 施設の運用面でやりすぎなところがあれば、適切な運用について報告書で言及することもあります。

STEP3. レポートで報告
事前分析、現地診断を基に報告書を作成し、担当者へ報告。提案内容は、まずは、費用がかからない運用改善の方法から提案し、小額の設備投資の提案、大規模設備投資、省エネに取り組む組織体制の構築方法、従業員等への勉強会の実施、設備更新時の補助金等の情報提供と申請の支援を行います。

Rebglo.の省エネ診断実施内容。光熱水の項目で分析する「省エネ診断」に加えて、BCPの実施状況を診察する

佐藤「必ず成果につながることがやりがいになっています。また伺った社長はもちろん従業員の皆さんが喜んでくれることが嬉しいです。まず、仕事をいただくときに一番気にされている点は、投資コストがどのぐらいの期間で回収できるかという部分です。さらに一番相談されることは、業者が提案した見積りの内容や価格について妥当性や意見を求められることも多いです。業者が提案してきた見積もりについて意見を求められます。そこでは第三者視点で客観的なアドバイスを心がける一方で、設備更新については、日頃付き合いのある業者を活用した更新をお願いしています」

省エネ診断でコスト削減につながった2つの事例

ここまでの内容で省エネ診断士の仕事や果たしている役割は理解できたと思います。ここでは実際に省エネ事例についてどんな事例があるのか、実際に佐藤さんが携われた事例と大きな効果が見られた事例の2つをご紹介します。

事例① 空調を25台更新して導入コストを3,000→1,700万円に(佐藤さん担当)

空調を25台更新する事例です。その施設は広くはないものの、空調管理が必須で、ずっと使用している研究室もあるため、当初25台の見積もりで更新費用が3,000万円でした。ただ実際拝見すると、ほとんど使わない会議室や倉庫の空調も見積もりに入っていたので、更新範囲を絞り、よく使うところだけにして、補助金も検討したうえで、もう一度見直しをしてくださいと伝えると、当初よりも空調は5台程度少なくなり、見積もり金額が1,700万円ぐらいに下がりました。佐藤さんによると何もしていないけど、提案コストが大幅に下がることもこのケースのようにあるそうです。

事例② 残業代を4,000万円減らした姫路市

佐藤さんの事例ではないものの、合理的なコスト削減の意味で象徴的な事例があります。これは2019年に姫路市で行われた実験なのですが、夏場の役所のエアコンは基本的に28℃に設定されているなかで、姫路市役所は25℃に設定しました。そうすると光熱費は上昇するため7万円コストが上がりました。しかし25℃に設定したことで28℃のときよりも業務効率が上がり、結果的に4,000万円の残業代を減らすことができました。

姫路市の事例はただコストを省くのではなく、状況を省みた結果、払うべきコストを払った結果、さらに大きな効果を生んだ好事例といえます。(姫路市の取り組み

佐藤「姫路市の取り組みの例は職員も自分の業務効率の体感が上がったり、疲労感も軽減されたみたいですよね。要は省エネはケチケチ活動じゃなくて、少し工夫すると違うところに効果が出てきます。省エネはバランスなので、省エネの『省』は『省く』ではなくて『省みる』なんですよ。ちなみに『省みる』は反省ではないです。振り返ってどうか、省エネには合理的に使うという意味があります。だからうまく使うことが重要です。姫路の例だと28℃に設定するか、25℃に設定するか、トータルで企業としてみたときは25℃だ、となりますし、エネルギーをうまく使ういい例だと思います」

【TIPS】よくある省エネ間違い3選 & 今すぐ始められる簡単な取り組み2選

誰でも発信できるようになった結果、実は間違っていることが正しいと思われているケースが存在します。ここでは佐藤さんによく間違えやすい「省エネあるある」とすぐに始められる省エネの取り組みについて伺いました。

よくある省エネ間違い① エアコンを頻繁にON・OFF

最近はメディアなどでも「冷房はつけっぱなしの方がよい」と言われているので、ご存じの方も多くなってきています。コロナ以降、換気の重要性も認知されていますが、掃除等で換気する場合もつけっぱなしの方が良いです。特に夏場に関しては2時間以内の外出であれば基本的に冷房はずっとつけたまま外出されても問題ありません。

よくある省エネ間違い② 照明を片方消して1灯に

節電の為に2灯ある内の1灯を間引きしている場合がありますが、2灯型は1灯を外しても電気が通電しているので、効果はあまり期待できません。逆に1灯の負荷が高くなり、寿命が短くなります。

よくある省エネ間違い③ 省エネに対する考え方「使ったらダメ」

省エネ=使ったらダメ、と思われがちですが、「合理的に使う」が正しいと考えています。業務効率が落ちる様な取り組み、従業員の方がめんどくさい、と思う取り組みはオススメできません。

すぐに始められる取り組み① 電気代を「料金」ではなく「使用量」で把握

まずは、どのくらい使っているかを「料金」ではなく、「使用量」で把握し、業務内容とすり合わせをすることです。そして、エアコンのフィルター、電気の器具の清掃を定期的にするだけでも効率は変わってきます。

すぐに始められる取り組み② 節水型のシャワーヘッドを活用

節水型のシャワーヘッドを活用すると、水の量はもちろん減りますが、お湯にするためにガスを沸かす量も減るため、水道代とガス代の節約につながります。

佐藤「もし短時間で暑いなって感じたときは風量を変えるといいです。1℃で10%の省エネ効果があるんで、暑いと感じたときは温度ではなくて風量です」

最後に:省エネ診断を受けるべき理由とは

現在さまざまなモノやサービスの値段が上昇しているなかで、省エネ診断の需要は増加しているようで、福岡県では1法人1施設でも既に受付を締め切るなど引き合いがあります。佐藤さんによると必要に迫られて診断を受けるケースが多いそうです。

佐藤「省エネ診断を受けないのは、例えば健康診断を受けるデメリットは?と聞かれているのと同じだと思います。私の省エネ提案は、まずできるもの・できないものも全部提案します。その中で、相手に合わせて、これはできます・これはできない、じゃあこれをやっていきましょうと一緒に考えていきます。規模に関わらず、小さいことから大きなことまで全て報告に盛り込みます。そこから良い着地点を一緒に見つけていきます」

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取材協力:省エネ診断士/中小企業診断士 佐藤久美子
執筆:望月大作
編集:ヤスダツバサ(Number X


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