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いま、介護施設・老人ホームにBCP対応が求められる理由とは? 対策例や、3つの災害・停電事例ニュースも紹介(令和3年度介護報酬改定の説明付き)

2021年の「令和3年度介護報酬改定」で、介護施設・老人ホームにおける「事業継続計画(BCP)」の策定が厚生労働省から義務づけられました。実際に義務化が有効となるのは、2024年4月からとなりますが、数日〜数週間でBCP対応の体制を整えることはかなり難しく、入念な準備と期間を要します。

では、介護施設・老人ホームではどんなBCP対応が考えられるのか。具体的な対策方法やリスクを把握するための災害・停電事例ニュースを紹介していきます。


なぜ、介護施設・老人ホームにBCP対応が求められる?

介護施設・老人ホームにBCP対応を義務化する背景は、近年コロナ禍やインフルエンザの流行などのパンデミックや地震や大雨・台風などの大規模災害が頻発している現状において、介護施設・老人ホームでも感染症や災害に対する対応力を強化する狙いがあります。

「令和3年度介護報酬改定」では、2021年から2024年3月31日までの経過措置が設けられているため、2024年4月1日はすべての介護事業者がBCPを策定しておかなければならず、そう考えると早急な対応を講じなければなりません。(令和3年度介護報酬改定について:厚生労働省

出典:業務改善ナビ

そもそも、介護施設とは
介護施設は、介護保険法に基づいて介護保険が適用される介護サービスが提供される場所のことで、介護保険法では「介護老人福祉施設」と表記されます。介護保険法における「介護老人福祉施設」とは、老人福祉法第二十条の五 に規定する特別養護老人ホームのことを指し、入所定員が30名以上と指定されています。利用対象者は基本的に要介護3〜5の要介護認定されている人が対象で、ただし要介護1〜2であっても、認知症が重度の場合ややむを得ない事情がある場合は入所が認められる場合があります。

ヒト・モノの安全確保に加えてどう行動するのか。介護施設・老人ホームのBCP対策例4つ

① 情報共有と伝達

疫病の流行でも大雨などによる災害においても常に最新の情報を掴み共有することは非常に重要になります。普段から常に施設の利用者やその家族、さらには近隣地域と密にコミュニケーションを取っておくことが重要になってきます。特に災害時においては避難計画・情報と避難経路は重要になるため、迅速かつ正確に伝達できるように避難経路確保も対策しておきたいところです。また災害時には通常のコミュニケーション手段がオンライン・オフライン問わず全く利用出来ない可能性もあるため、非常時のコミュニケーション手段についても検討しておくことが必要です。

② 利用者の安全確保

介護施設でもっとも大事になってくるのは、利用者の安全確保です。利用者の健康・体調管理や、特に緊急時にどんな対応を取る必要があるかは検討しておかなければなりません。介護施設は特に介護が必要になる利用者が前提になるため、緊急時に転倒しないような対策であったり、身体的・心理的安全確保は徹底する必要があります。

③ 施設内の安全確保

大きな災害が起こった際、どんなリスクが施設内で発生するか、シミュレーションした結果を反映させる必要があります。施設内のどの場所でどんなリスクが生じる恐れがあるかを把握し、避難経路や避難場所の確保に活かしておきましょう。さらに施設内の消火設備の点検や避難訓練も定期的に行っておく必要があります。またパンデミックなどについては衛生管理がポイントになるため、常に安全策と予防策を検討しておきましょう。

④ 人材の確保とそれに伴う活動

介護人材は人材難といわれているなか、介護施設における災害時の対応で充分に安全をもって対応するためにも、人材確保は必要です。日ごろから緊急時の対応に関してはスタッフ間で共有し、スタッフの対応リソースにも気を配りましょう。利用者と同様にスタッフの健康管理なども気を配り、研修なども適宜実施することが大切です。

介護施設・老人ホームのBCP対策に知見のある省エネ診断士が考えるBCP対策のポイント

まず利用者観点から考えると、BCP対策とは大雨や地震などいつ起こるかわからない災害に対して備えるものです。BCP対策をしていないことで、短期的に利用者が離れてしまう可能性があると言います。

実際に大雨があったとして、 例えば夏場にエアコンが動かない中で介護が必要な人たちをどう施設で守っていくのか。 2階に垂直避難する場合でも、ベッドに寝たきりの人はエレベーターも動かないなかで2階までどうやって移動するのか、どう避難させるのかとなります。

BCP対策をやらないことは人の生死に関わり、もちろんいつ起こるかわからないことに対して備えることなので訓練も必要。訓練にどんなに慣れた人でも、急な事態に対応するにはマニュアルがあり、それに対する訓練が必要です。特に地震での避難訓練だけではなく、水害発生時の避難訓練も重要です。

例えば介護施設の施設長が責任者の場合でも、その人がいるときに災害が起こるとは限りません。そのため限られたメンバーで介護者を守り、利用者だけではなく勤務者も守るのがBCP対策です。

自然災害と感染症のフローチャートが有効

出典:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン

これら4つの対応策に関しては、シチュエーションを「自然災害」と「感染症」に分けて、つまり2種類×4つの対策で検討することが必要です。それぞれ災害が発生した際のフローチャート作成なども対策としては有効になってきます。

介護施設・事業所における事業継続ガイドライン
また厚生労働省は「介護施設・事業所における事業継続ガイドライン」を新型コロナウイルス感染症発生時と、自然災害発生時に分け、BCP(事業継続計画)のひな形や様式ツールなども併せて公開しています。さらには、厚生労働省は同じページで「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」として、研修動画や資料を公開しており、サービス類型ごとの作成ポイントやアドバイスを動画で学ぶことも可能です。

介護施設・事業所における事業継続ガイドライン:厚生労働省

介護施設・老人ホームの3つの災害・停電事例

災害・停電事例① 台風15号による災害・千葉県茂原市(2019年9月)

出典:NHK WEB

近年台風や線状降水帯の発生による豪雨災害が多く発生しています。2019年9月に千葉県茂原市で発生した災害では、茂原市の特別養護老人ホーム「真名実恵園(まんなじっけいえん)」にて停電が発生。この停電は5日間で計117時間ものあいだ続きました。9月と言えど気温が下がらない熱帯夜も続くなかで、クーラーも利用できず、窓を全開にして自家発電装置で扇風機を動かし、籠もる熱を逃がすなど対応を講じて乗り切ったそうです。

災害・停電事例② ハリケーン「イルマ」による災害・アメリカ フロリダ州(2017年8月)

ハリケーン「イルマ」は、勢力が5段階で4番目に強い「カテゴリー4」の状態で2017年8月10日朝にフロリダ州に上陸、翌11日には熱帯低気圧に勢力を弱めました。しかし、ハリケーン「イルマ」上陸後、フロリダでは大規模な停電が続き、老人ホームである「ハリウッドヒルズ・リハビリテーションセンター」ではこの影響で8人が死亡。

フロリダは引退生活を送る場所として人気があり、フロリダ州には老人ホームが680カ所以上あり、約7万3,000人が入居しているといわれています。そのうち推計150カ所が今回のハリケーンで停電もしくは一部が停電。また、死者を出した本老人ホームでは、近年、電力設備や発電機、警報設備の不備で連邦規制違反が指摘されていたそうで、BCP対応が遅れたことも最悪の事態を招いたと考えられます。

災害・停電事例③ 「令和2年7月豪雨」における全国的な豪雨災害(2020年7月)

九州地方や岐阜、長野など西日本と東日本の広範囲で大きな被害をもたらした2020年7月の「令和2年7月豪雨」では、各地の高齢者関連施設で大きな被害が生じました。この全国的な豪雨災害では78施設が被害を受けました。例えば熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園(せんじゅえん)」では、入居者13名と職員1名が犠牲になり、51名が病院に搬送される事態になりました。当初は九州地方を中心に豪雨被害が発生していたため、高齢者関連施設の被害も九州を中心に拡がりました。

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執筆:望月大作
編集:ヤスダツバサ(Number X)

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